No.94 店舗オープン前の準備に美味しさが伝わる料理撮影

「昨日お友達がオープンするお店の手伝いに行って来たのだけど、オープン前の準備って色々大変なのね」パートで働いているスーパーでのお昼休み、お握りをパクつきながら仲間の彼女が言う。「どんなお店なの?」私は夫のと一緒に作ったお弁当だ。「パスタ屋さんなんだけど、昨日は食器なんかが届いたので検品したり洗ったりして結構忙しかったよ」それで彼女は昨日休みだったのか。
「もともと料理が上手な人ではあったんだけど、イタリアンが大好きでオリーブオイルとかバルサミコとかにもこだわりが凄いんだよね。自分の店を持つ前に1度ごちそうされたことがあってね。どう思うか聞かれたから正直に答えたけど」その感想が気になったけど、彼女が話すのに任せていた。「店を出すかどうかが掛かってる時に、お世辞や社交辞令では言えないでしょ?お金もかかるわけだから」ますます気になるではないか。そして彼女は嬉しそうに笑いながら言ったのだ。
「それが、めちゃめちゃ美味しかったんだよ!ミートソースなんだけど、ソースが絶品なんだ。私には真似出来ない」思わず身を乗り出してしまう。「そんなに美味しいんだ」頷いて、彼女は続けた。「たまたまメニュー表に載せるための撮影もやってたんだけど、私たち全員がごちそうになったのね。皆感激してた、こんなに美味しいミートソース食べたことがないって」これはオープンしたら是非足を運ばなければなるまい。
「こんなに美味しいパスタ、ちゃんと美味しさが伝わるように撮影しないと申し訳ないって、もう1度撮り直してたもの」持参したポットのお茶を飲みながら、彼女の話は更に続く。「撮影用って光や照明の加減によって、写り方が全然違うんだねぇ。白い傘みたいなのを使ったりして撮ってたよ」「それでそのお店はいつオープンするの?」我慢出来なくなって、私は尋ねた。「来月早々にはって言ってた」そして彼女はニッコリ微笑んで言ったのだ。「大丈夫、連絡があるから。そうしたら絶対一緒に行こうね!」私は力強く頷いたのだ。