No.82 執筆活動のイメージ作りにハウススタジオを利用

スタジオ撮影

自らが選んだ小説の舞台。そこに近いところに身を置かないと、筆が進まないというタイプの物書きがいる。いつもいつもというわけではないのだが、ある時ピタッと筆が止まり、スランプに陥っていくのだ。スランプから這い上がるまでが一苦労で、そのための舞台装置が冒頭の話。

もちろんいちいち海外に行くことなど不可能なので、屋内外で最適な舞台を探しておくのもマネージャーの大切な仕事となる。屋内なら喫茶店からレストランなど、それ以外ならハウススタジオなどを利用することになる。屋外なら公園の一角、街並みなど。何故、そんなに詳しいのかって?僕もそんなマネージャーの1人だからね。

今までで一番苦労したのは、英国的なくすんだ雰囲気のあるパブを探していた時だ。ハウススタジオで見つけたそこは一番しっくりきたパブで、営業中は軽食も提供していた。そこでお気に入りのシングルモルトをロックでやり、数日間続いたスランプから脱出出来たというわけ。そこは小説家である彼のお気に入りとなり、それからも度々利用させてもらうことになる。場所が世田谷に近いというのも良かったのだが。

小説家と言っても純文学を書いているわけではない、スリル満点の探偵物が彼の真骨頂だ。アイデアが湧いてくると、数日間パソコンに張り付いている。食事などにはお構いなしで、極めて不健康な生活になる。早く結婚してくれと思うのだが、本人にその気はまるでない。ここ最近のシリーズで、探偵の好敵手としてやさぐれた刑事が登場したのが好評のようだから、その内に警察関係もチェックしておかなければなるまい。

サンドイッチとコーヒーをセットし、吸い殻のたまった灰皿を洗う。これが帰宅前のマネージャーたる私の仕事だ。帰宅と言っても、同じ建物の中に私の部屋があるのだが、どこかで区切らないと仕事とプライベートの境界が曖昧になるのだ。部屋に戻り、パソコンを立ち上げる。ハウススタジオの物件をチェックしていく。使えそうな物件を用意しておくこと、これも私の仕事の一つなのだ。

ピックアップ記事

関連記事一覧