No.54 結婚式に呼びたい懐かしい地元の友人

地元を離れて仕事をしていると、学生時代の友人たちに会う機会は本当に少なくなる。交際範囲も会社関係、仕事関係に固まってしまい、連絡を取ること事態が珍しい。だから私自身の結婚が決まった時にも、誰を招待するか考え込んでしまった。招待客を決めるのはまだ先だから急ぐ必要はなかったけれど、自然に学生時代の友人たちの顔が思い出されてきたのだ。
私は高校卒業後は東京の短大に進学したから、その頃から地元とのつながりは薄くなっていた。進学当初こそ機会があれば地元に帰って高校時代の友人たちと旧交を温めていたものの、お互い自分たちの生活が忙しくなっていく。同級会にしてもそれぞれの仕事の都合があるから、いつの間にか顔を出さなくなっていた。ごくたまに帰る時は、両親のためだったと言っていい。
友人たちの顔を思い浮かべながら、ふとNのことが蘇る。3年位前に結婚した友人で、私も式に出席していた。学生時代には昼食を共に食べる友人たちの1人、深く付き合っていた。同級会で顔を合わせた以外に会うことはなかったが、ごくたまに連絡を取り合うことはあった。「結婚式に出席してくれ」と連絡がきたのもその頃だ。
Nには出席してもらいたい、無性に彼女の声が聞きたくなった。スマートフォンで呼び出した彼女の番号をそっと押す。「はい?」懐かしい声だ。「私、元気?」彼女の声が弾む。それから互いの現況を報告しあう。子供がいると聞いた時には、心底驚いたものだ。「言ってくれれば良かったのに」「うん、子育てが大変でねえ」それで私も結婚することを報告した。同じ職場の人で2年位付き合ったこと、結婚式の日取りが決まったらすぐに連絡することなど。「あ、親族の集合写真は撮影した方がいいよ」えっ、何故?「私の時に、式で気が合って二言三言言葉を交わした従兄弟が、その写真がきっかけで交際開始して結婚したからね」「まあ!」「でしょ!」